オリジナルインプラント
3歳の注意欠陥多動性障害児に診療を行い、患児と親に説明を計40分行った場合、小児科では初診料、処方箋料に紹介患者加算150点および心身医学療法外来90点の計571点であるが、精神科では初診料、紹介患者加算、処方箋料および通院精神療法340点の計821点と、小児科医療の不採算性が指摘される。
全国公私病院連盟の1999年度調査によると、内科では患者一例あたりの医療収益は3万2474円、医業費用は3万4124円で差し引き1650円のマイナスであるが、小児科では医療収益2万7026円、医業費用は3万442円の差し引き3416円のマイナスとなるという。
独立採算で考えればこれももっともな考え方ではあるが、医療の場合には採算だけではない面もあるし、経営学的に考えても、小児科で得た評判は他科にもプラスの効果を与えたり、子どもの親が内科を受診するというメリットもあり、厳密な独立採算制は近視眼的過ぎるのではなかろうか。
小児科医の人数自体が足りないという問題もある。
1998年の小児科医数は3万464人(厚生労働省調べ)で、2年前より約700人減少している。
小児科医希望者も他の診療科に比べて少なくなっている。
厚生労働省の研究班が2001年9月に国公私立20大学の1316人の医学部学生に進路希望のアンケートを実施したところ、希望先を決めている学生のうち小児科医希望は10%弱と少なく、今後の小児医療におよぼす影響が懸念されている。
点滴を行った場合の医師一人あたりの診療時間を成人と小児とで比較すると、成人では5分以内で差し替えが少なくて済むのに対し、小児では20分以上の診療時間が必要であるが、点滴差し替えが多いことから倍の40分、点滴に関しては単純に小児科医では内科医の8倍の労働時間を要する。
さらに小児科医療は長い注意集中時間と患者への頻回のケアが必要とされ、小児は容体変化が早いことから単位時間あたりの医療業務・変更が多い。
薬剤の使用量も少ないので収益も少ない。
また最近では、小児救急医療が必要な場合は、かかりつけ医を経ずに病院の救急外来へ直行する傾向にあり、小児科医が常勤している病院に患者が集中し、1病院あたりの人数が少ないにも関わらず小児科医が時間外.夜間救急医療を行う場合が多い。
さらに、新生児集中治療室(NICU)での医療業務拡大に伴い、小児科医の当直回数が増大していることも問題視されている。
最近では、勤務の小児科医が救急・夜間当直を含めて激務なので、開業する例も増えたという。
開業医は夜間の診療を行わない場合も多いので、これは夜間の小児科救急にとってはマイナス要因だ。
各自治体も手を打ち始めた。
東京都では、2000年4月から高度な設備を備えた小児救急医療機関を、都内51ヵ所に整備した。
練馬区や葛飾区では地元医師会の主導で、開業医が交代で夜間に診療する仕組みづくりを進めている。
2000年4月の診療報酬改正でも小児科に手厚くなってはきた。
しかし、これらの政策に医学生が反応したとしても、その効果が目にみえて現れるのには数年間かかる。
それまでの日本の小児科医療はかなり厳しい状況であるといわざるを得ない。
保険組合による査定は妥当か?これまで話してきたように、医療機関の行った医療行為に対する支払い方法がどんどん厳しくなっているわけだが、現実に何が問題なのだろうか。
現在、医療機関への支払い方法の中心となっている出来高払いの仕組みの下でも、間違った医療行為や不正な請求、たとえば行っていない医療行為をやったことにして請求することなどはチェックされている。
そのようなチェックの仕組みを査定という。
この仕組みは実はとても複雑だが、話を簡単にするために、保険組合の話から始めよう。
保険組合といっても非常に多くの数がある。
実は日本というのは保険組合が多い国で、まず1800の健康保険組合がある。
さらに3200の国民健康保険(国保)、ひとつの政府管掌健康保険組合と、大きく分けると3つになる。
政府管掌健康保険組合は社会保険庁が管轄しているが、中小企業の保険組合の集まりだ。
ここは規模が大きく、加入者を全部足すと3700万人ぐらいになる。
健康保険組合というのは企業がやっている組合で、たとえば、この本の出版元のK社にもある。
そして市町村が管轄している国保がある。
そこで、現在の「保険組合の査定は妥当か」どうかを考えたい。
日本の場合は比較的査定を機械的にやっていて、医学的な専門家はあまりいない。
医師が保険の査定にいくことはあるが、それは非常勤であって、保険者側の人ではない。
それほど一生懸命でもないし、いろいろな医師が来てやっているから標準化もされていない。
現在保険の査定に関して、アメリカと日本の一番の違いはここにある。
アメリカには保険者側に雇われている医師がいる。
これがまた妙に給料が高かったりするが、この医師たちがプロとして査定しているわけだ。
今後、日本でも力のある保険組合だったら査定を合理的にできる可能性がある。
いま進んでいるのは、やはり健康保険組合だ。
各企業の健保で、あまり経営がうまくいっていないところ、あるいはいまはうまくいっているけれど出費を減らしたいと思っているところ、たとえばIBMとか日立など、大きな会社の健保組合には加入者が何万人もいて規模が大きいので、専属の医師や看護師を雇って厳密な査定ができる可能性がある。
もうひとつの可能性は、小さな保険組合は一社では無理だから、ネットワークを組んで医師を雇う、あるいは医師がやっている査定会社で査定をしてもらうということで、実際にそういう話も結構出てきている。
これは将来的にはかなり伸びてくる分野だろう。
仕組みを考えれば、査定自体が妥当かどうかの判断は難しいけれど、間違いなく広がっていく。
現実に、払いたくないという保険者がいる以上、間違いなくビジネスとして成立するし、実際そういう会社もちょこちょこできてきている。
レセプトを厳密にチェックすればすぐわかるので、将来的には先に話題にした「重複受診は認めない」ということはあり得るかもしれない。
また、さらにこれが一歩進むと、一時期ちょっと話題に出ていたが、保険者が医療機関を選ぶということになる。
それはアメリカのように保険者が現場の医療にあれこれと介入するマネジドケアに近い形になってしまう。
ただ、これは日本では無理かもしれない。
というのは、もし保険者が医療機関を選んだ場合、選んだところが適当かどうかという問題がある。
つまりアメリカがいい例だが、選ぶ理由が、もちろん質も大事ではあるが、自分たちが思うようなちょっと安めの医療をやってくれるという点にあるからだ。
だから、そういう選び方でいいのかという問題がまずひとつある。
また、日本医師会も強硬に反対している。
個人の医師も、こういった仕組みと契約するとも思えないし、これはあまり現実的ではない話と思われる。
そして、アメリカでも問題になったのは、契約するところがたくさんあればいいが、少ないと契約病院へいくのがたいへんだということだ。
日本の場合、いままでは自由にどこにでもいけたのが、「ここしか受診してはだめ」というような形になったら、とても不便だ。
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